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視点を変えて世の中を眺めてみよう!
相手の気持ちに寄り添うきっかけとなる絵本5冊




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小学生になると、子ども同士の付き合いがぐんと増えます。
先生が来るまでの朝の時間、休み時間、お昼休みや放課後、そして習い事……。

トラブルが起きて、ようやく親も先生も問題を認識しますが、小学生になると園児の頃のようにはいきません。

お互いの考え方があり、行動に移すことで起こるトラブルは、子どもたちが自ら考えて行動している証です。

それぞれの成長を妨げないためにも、何かトラブルが起こったとしても、一方の行為を「いじめ」と断定せず、それぞれの立場で相手の気持ちを想像できるようになるといいですね。

今回紹介する絵本は、学校図書館の道徳や国語の授業で「相手の気持ちを考える」ときに使われてきた絵本を含めた、5冊紹介しています。

いずれも、子育ての心強い味方になってくれる絵本です。
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いじわるなあの子。でもあの子からみたわたしは?『となりのせきのますだくん』/『ますだくんの1ねんせい日記』



『となりのせきのますだくん』『ますだくんの1ねんせい日記』武田美穂(著)/ポプラ社

1991年に発売された『となりのせきのますだくん』は、引っ込み思案な小学生の女の子、みほちゃんの視点で描かれています。

となりのせきのますだくんは、みほちゃんの大事な鉛筆を折ったり、給食でおかずを残していると先生に言いつけたり、と乱暴者のいじわるな男の子として描かれていました。

そして5年後に発売されたのが『ますだくんの1ねんせい日記』です。

ここでは、先ほどのみほちゃんの視点から変わって、ますだくんの目線で学校での出来事が描かれています。

みほちゃん視点で描かれた絵本では、ますだくんはいじわるな男の子でしたが、実際のますだくんは、たくさんの兄弟に囲まれて育ったため、みほちゃんをまるで妹のように思っていて、お世話を焼いていただけだったのです。

みほちゃんの気持ちと、ますだくんの気持ち。がんばり屋さんと内気な子の気持ちのすれ違いは、学校の図書館でもよくみられる光景でした。

「あいつ、わかってない!」と怒ってしまったときには、相手の気持ちを知るきっかけとなる絵本です。

友だちの「ふしぎ」に答えたママからの手紙が絵本になった『すずちゃんののうみそ』



『すずちゃんののうみそ』竹山美奈子(著)/三木葉苗(絵)/宇野洋太(監修)/岩崎書店

「ねぇねぇ、自閉症ってなあに?」と聞かれたら、どう答えるべきか。
親としてきちんと答えたいと思っても、自分の知識だけでは心もとないし、どこまで説明できるか、悩ましくもあります。

そうやって難しく考えすぎてしまう前に読んであげたいのが『すずちゃんののうみそ 自閉症スペクトラム(ASD)のすずちゃんの、ママからのおてがみ』です。

2016年3月、当時年長だったすずちゃんのお母さんは、すずちゃんのクラスメイトに自閉症とは何か、すずちゃんの頭の中はどうなっているのかをわかりやすく伝えるために紙芝居をつくりました。

「すずちゃんは、どうしてくつがはけないの?」
「どうしてしゃべれないの?」というクラスメイトの質問に答えるためです。この紙芝居を絵本にしたのが本書です。

あとがきでは、すずちゃんのお母さんがクラスメイトからの質問についてこう話をしています。

「子どもたちは鈴乃と仲良くしたい、鈴乃のことを知りたい、というシンプルな理由で、くったくなく質問してくれます。そして拍子抜けするほどすーっと受け入れてくれるのです」

自分の子、あるいは同じクラスに自閉症スペクトラムやアスペルガー症候群を抱える子がいたら、ぜひ手にとってほしい絵本です。

ともだちの話はうそ?ほんと?『エイドリアンはぜったいウソをついている』



『エイドリアンはぜったいウソをついている』マーシー・キャンベル(著)/コリーナ・ルーケン(絵)/服部雄一郎(訳)/ 岩波書店

学校で友だちと話していると、ときどき「え、ほんと? それってうそじゃない?」と思う話題が飛び出すもの。

そのとき、相手に「それ、ウソだ!」と決めつけてしまう? それとも信じたふりをする?

『エイドリアンはぜったいウソをついている』は、エイドリアンの話を信じられない女の子の視点で描かれています。

エイドリアンは馬を飼っているというけれど、おじいさんとふたり暮らしの小さな家に、馬が飼えるはずがないのです。

「それ、ウソだよ!」と信じない女の子にお母さんは
「でも、どうしてウソってわかるの?わが家のものしりおじょうさん」と言います。

ある日、女の子は、犬を散歩させているとお母さんがいつもとちがう道を歩いていることに気づきます。道の先には、エイドリアンの家がありました。

到着するとお母さんは、おじいさんとすぐに話を始めてしまったので、仕方なく女の子はエイドリアンと話をすることにしました。

そして、エイドリアンから馬の話を聞いているうちに、女の子はひとつの可能性に気がつくのです。

大人も子どもも特別なことは何も話していないのですが、子どもたちの交流を通して相手を思いやることの大切さに気づかせてくれる物語です。

絵本を読み終わってから、改めて表紙のイラストを見てみてくださいね。きっと面白い発見があると思いますよ。

イヤがってるのは相手も同じ!?『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』



『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』五味太郎(著)/ 偕成社

五味太郎さんの『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』は、歯医者とワニの憂鬱な気分を描いた絵本です。

歯医者さんは、鋭いキバを持つワニがこわい。ワニは、怖い器具で歯を抜こうとする歯医者さんがこわい。

「(ワニのが)こわいなぁ…」
「(歯医者さんが)こわいなぁ…」

「でも(治療を)がんばるぞ」

「(かまれて)いたい!」
「(治療が)いたい!」

どちらもまったく同じタイミングで同じ言葉を使っていますが、それぞれ理由が異なります。

ワニは、どうしてこわいのか。
歯医者さんは、どうしてこわいのか。
同じ言葉でも、立場がちがうと理由も異なります。

同じ言葉、気持ちだからといって、必ずしも自分と同じことを思っているわけではないということを、肩の力が抜けたユニークなストーリーで伝えてくれる絵本です。



学校図書館で勤務していた頃、ここに来ている子どもたちは今、先生からも親からも離れたところにいるんだなぁ、と見守っていました。

本棚のかげで、クラスが離れた友だちと静かな声でおしゃべりする子。貸出履歴に残らず、ここで本を読んで棚に戻す子。何を読むこともなく、ただ座っている子。

子どもたちが、思い思いの自分時間を過ごせる場所として、学校図書館は開かれていました。

なかには、クラスの子や先生とうまくなじめない子も来ます。その子たちにとって、学校図書館は彼らの拠り所でした。

小学生は、相手の気持ちはもちろん、自分の気持ちすらつかみきれない時期でもあります。悩んでいることに気づかず、体の不調が先に来ることも。

お子さんの抱えているものがわからないときには無理に掘り起こさず、お子さんのお気に入りの絵本を取り出して親子で読み聞かせの時間を作ってみるのもおすすめです。

もちろん、今回紹介した絵本もぜひ手にとってみてくださいね。

絵本を読むことを通して、自分の気持ちにぴったりな言葉を見つけたり、自分の気持ちや考えを伝えるのにしっくりくる言葉に思いがけず出会えたりします。

親との対話だけでなく自分で答えを探したくなる時期だからこそ、道しるべとなる本を手渡していきたいですね。

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執筆者プロフィール
絵ノ本桃子


区立図書館勤務後、育児をきっかけにシェア本屋「せんぱくBookbase」を開店。和室のある本屋として町で暮らす家族にとって読書の楽しみを提案している。本屋運営の傍ら、学校図書館勤務を経て、現在は不登校の子たちの学習をサポートしている。3児の母。

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