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世界にはたくさんの家族のかたちがある!
「家族」を描いたユーモラスな絵本4選




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第三回のテーマは「家族のかたち」です。

近年、家族の在り方が多様化しています。いろんな家族のかたちがあることを知ってほしいけれど、子どもたちには自分の家族以外の暮らしを知る機会があまりありません。

大切な誰かに寄り添える大人になるために、絵本から学べることはたくさんあります。

アルゼンチン、ノルウェー、カリフォルニア、ニューヨークから届いた4家族の絵本を紹介します。
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ママはヤマアラシ!?かぞくしか知らない姿を描く『かぞくのヒミツ』



『かぞくのヒミツ』イソール(著)/ 宇野和美(訳)/ エイアールディー

アルゼンチンの作家イソールが描く『かぞくのヒミツ』は、母親の寝起きの姿とよそいきの姿のちがいをユーモラスに描いた絵本です。

主人公の女の子は、早朝に見た寝起きのママをみて「ヤマアラシだ!」と驚きます。髪の毛が逆立っている様子が、ヤマアラシに見えたのです。

仲良しの友達の前でも、心配は尽きません。「いつか私もヤマアラシになるのかも…」と不安な彼女は、自分の家族と違って「ふつう」だと思っている友達の家に泊まりにいくことに。

そこで翌朝見たのは、ヤマアラシとは違う生き物でした!

どの家も、外で見せる姿と家で見せる姿は違うもの。女の子は、最後は安心して、迎えに来た母親の手を取り家に帰ります。

図書の授業で小学3年生に読み聞かせをしてみたら、とても好評でした。「あるあるだー!」と共感していた様子です。

幼稚園から高学年のお子さんに人気の絵本なので、年齢差があっても楽しめます。

友達への憧れや嫉妬を通じて
自分の家族と向き合う絵本
『うちって やっぱり なんかへん?』




『うちって やっぱり なんかへん?』トーリル・コーヴェ(著)/ 青木順子(翻訳)/ 偕成社

自分の家族への不満や、親友一家への憧れや戸惑いを描いた絵本が『うちって やっぱり なんかへん?』です。

主人公は7歳。日本だと小学生の女の子になります。彼女は、おしゃれなワンピースにふかふかの絨毯、かっこいいお父さん、というパーフェクトな親友一家に憧れを抱きます。

当時のノルウェーには、髭を生やす男性は一人もいませんでした。そんな中、自分の父親は町でたったひとり髭を生やしているし、母親もへんな布でワンピースを作るし…。

お腹が痛くなるほど「うちの家はヘン」と悩む女の子は、ある年の夏、憧れていた親友一家が離婚したことを知ります。

親友になんて声を掛ける? もう憧れていないけれど、それって悪いこと?

少しずつ、自分の家族と向き合い始める主人公。これは、作者の実体験をもとにしたお話です。

難しい問題を扱った絵本だと思いますが、4歳ぐらいからでも理解することができる内容です。

里親の暮らしを描く『ねぇねぇ、もういちどききたいな わたしがうまれたよるのこと』



『ねえねえ、もういちどききたいな わたしがうまれたよるのこと』 ジェイミー・リー カーティス (著) / ローラ コーネル (イラスト) / 坂上香(訳)/ 偕成社

このセリフは、ときどきわたしの子どもも言います。「お父さんがね、新幹線で会いに来てくれてね…」などと私が話すのを嬉しそうに聞いてくれるのですが、この絵本は、パパとママが二人で赤ちゃんに会いに行くところから始まります。

「里子」を描いたこの絵本では、里親となる両親が子を迎えたときの経緯や、どのようにして育てられてきたのかが、子どもの視点から描かれています。

ミルクをあげて、おむつを替えて、赤ちゃんを抱っこしながらテレビを見て、誕生日を祝う…。

これらは、よくみる家族の風景で、里子だからといって特別なことはしていません。

里親、実親に関わらず、「生まれてきてくれてありがとう」という気持ちを、暮らしの中で子どもに伝え続けることの大切さを教えてくれます。

実親と異なる姿を見せているようでいて、実は「家族」という他者同士が楽しく過ごす秘訣を知ることができる本なのです。

そして、絵本に登場する女の子の笑顔がとても素敵で、力強いイラストが印象的なのもこの絵本の魅力です。

のびのびと愛を育む二羽のオスペンギン『タンタンタンゴはパパふたり』



『タンタンタンゴはパパふたり』 ジャスティン リチャードソン&ピーター パーネル (著) / ヘンリー コール (イラスト) / 尾辻 かな子&前田 和男 (訳) / ポット出版

最後に紹介するのは、ペンギンが主人公のノンフィクションで、2羽のオスのペンギンが卵からヒナを育てる話です。

この絵本の舞台となったNYのセントラルパークの動物園では、気を利かせた飼育員さんが、生み捨てられた卵をオスのペンギンが暮らす巣に運んだのです。

パートナーシップ制度が生まれるなど、日本でもLGBTQに配慮した取り組みが始まっていますが、まだ子どもたちにはあまり浸透していないように感じます。

そうしたことを知ってもらい、親子で話すきっかけの一つとして、この本はおすすめです。

『タンタンタンゴはパパふたり』に登場する2羽のペンギン、ロイとシロは世間の目などおかまいなし。だって周囲のペンギンは彼らに興味も示さないし、攻撃することもないからです。

彼らが彼ららしく愛し合うことが、自分の家族や暮らしになんの害も与えないことを知っているのです。



家族の悩みを打ち明ける絵本、変わっていても家族でいられることを喜ぶ絵本、2冊ずつ紹介しました。

家族の数だけ、悩みや喜びがあるもの。

子どもが周りと自分たちの家族を比べはじめたら、羨んで、嫉妬して、蔑むことを覚えるかもしれません。

比べることで気づくこともたくさんあるので、大事なことだとは思いつつも、「家族」にはいろいろな形があることを少しでもいいので知ってほしいなと思います。

そんな時期を迎える前に、親子で一緒に「家族の形」を描いた絵本を読んでみませんか。

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執筆者プロフィール
絵ノ本桃子


区立図書館勤務後、育児をきっかけにシェア本屋「せんぱくBookbase」を開店。和室のある本屋として町で暮らす家族にとって読書の楽しみを提案している。本屋運営の傍ら、学校図書館勤務を経て、現在は在宅学習支援をサポートしている。3児の母。

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