【絵ノ本桃子】女の子は、もっと自由になれる!道を切り拓いた女性が主役の絵本

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2022.03.11

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【絵ノ本桃子】女の子は、もっと自由になれる!道を切り拓いた女性が主役の絵本

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【絵ノ本桃子】女の子は、もっと自由になれる!道を切り拓いた女性が主役の絵本

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3月といえば、ひなまつり。学校の給食でも、ひなあられやちらしずしなどひなまつりに因んだ料理が登場します。

ひなまつりだけでなく、世界基準でも3月は「国際女性デー」と呼ばれる女性にとって大切な日があります。

これは、1975年3月8日に国連により制定されたのですが、女性が活躍する場が増えたことで、この10年ほどで女性の活躍を描いた伝記が増えて、学校図書館の伝記コーナーも変わりつつあります。

その多くは学習まんがなのですが、今回はまんがをまだ読まない年齢の子にも楽しめる、女性が活躍する伝記絵本を4冊、ご紹介します。

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夢破れても愛する場所を守り抜いた女性『ビアトリクス・ポターの物語 キノコの研究からピーターラビットの世界へ』

『ビアトリクス・ポターの物語 キノコの研究からピーターラビットの世界へ』 リンゼイ・H・メトカーフ(著)/ ジュンイ・ウー(絵)/ 長友恵子(訳)/ 西村書店

「ピーターラビットの生みの親」
「ナショナル・トラスト運動の協力者」

として語られることの多いビアトリクス・ポターは、もともとはキノコの研究者でした。女性差別により、研究の道を閉ざされたポターの、研究者としての人生に焦点を充てているのがこの絵本です。

女の子だからと学校へ行かせてもらえず、家庭教師から学ぶ時代。彼女の"友人"は動物であり、植物でした。

観察好きな彼女は、本物に近づけるようスケッチをしたり、顕微鏡での観察を始めます。たくさんの自然に囲まれて育ったポターが、特に夢中になったのは「キノコ」でした。 

同志や協力者に恵まれ、研究に没頭するポターですが、論文を発表しようとしたとき、「女性は学会に出席できない」と、論文提出そのものを拒否されます。

失意の彼女は、研究者としての道を諦め、絵本制作への道を歩み始めます。

研究者としての道は閉ざされましたが、研究の成果・緻密な絵の評価は、現在も世界中に多くのファンがいる「ピーターラビット」シリーズが証明しています。

ピーターラビットでの成功によってポターは「女性が経済的に自立する」自由を得ました。

絵本には、ポターを拒否した学会のその後についても触れています。100年の進歩が感じられる内容になっています。

おしゃれの自由を女性にもたらせたデザイナー『ココとリトル・ブラック・ドレス』

『ココとリトル・ブラック・ドレス』/ アンネマリー・ファン・ハーリンゲン(著・絵)川原あかね(訳)/ 文化出版局

稀代のファッションデザイナー、ココ・シャネル。

孤児院で育ったココは、縫物や刺繍、編み物を徹底的に教え込まれ、お針子としての仕事を始めるのですが

「貧しい暮らしは二度といやだ。お金持ちになる!」

という目標を掲げ、友人の屋敷に居候し、貴婦人の世界を学び始めます。そこで見たのは「自分をごまかして無理している女性」の姿でした。

きついコルセットを締め、頭には重い飾りを乗せた帽子をかぶり競馬を見る。さらに、乗馬はスカートのまま乗るのです!

見た目が優雅でも、ちっとも自由に見えません。お針子としての仕事をしていたココは、乗馬に乗るため女性用ズボンをデザインし、競馬に行くための麦わら帽子を安く手に入れ、リメイクします。

はじめは遠巻きに見ていた貴婦人も、ココの自由で開放的なファッションに惹かれ、重い帽子を取り、コルセットを脱ぎ捨てます。

やがてココは、女性のファッションカラーとして敬遠されていた「黒」を使って、黒いドレスを仕立て始めます。コルセットも、重たい帽子も、女性の動きをゆっくりさせるものでした。

「女性はこうでなくてはいけない」という概念を取り払ったココ・シャネルは、人にとって欠かせない衣食住の「衣」から女性の自由を作り出したのです。

ココ・シャネルは伝記まんがもあるので、絵本を読んでから、中学年になって学習まんがを読む、というステップも踏める絵本です。

女性差別を受け入れながら"男女平等"を実現した判事『大統領を動かした女性ルース・ギンズバーグ』

『大統領を動かした女性ルース・ギンズバーグ』ジョナ・ウィンター(著)/ステイシー・イナースト(絵)/ 渋谷弘子(訳)汐文社

1933年、ユダヤ人両親のもとに生まれたルース。ユダヤ人迫害から逃れるため、ニューヨークに移り住みますが、差別からは逃げられませんでした。 

差別を感じていたルースは「頭がよければいじめを受けない」と考え、勉強家の両親の元で勉学に励み、小学校で優秀な成績を修めます。

高校でも優秀な成績を修めたルースは、大学進学を決意しますが、大学ではさらに男女差別の壁にぶつかります。

差別を経験していたのはルースだけではありませんでした。

妊娠したら給料が下がる。
調べものをしたいのに閲覧室へ入れない。

こうした差別に悔しい思いをしてきた女性たちの声が集まり、「同一労働同一資金」「男女平等」の運動が各地で巻き起こります。ルースが「女性だから」という理由で女性差別に関する裁判を担当することになるのですが、なんと、6つの裁判のうち5つを勝ち取ることに成功したのでした。

ときは1970年代。

「世界国際女性デー」が制定された時代です。女性が躍進するために「法」を整備したルース。絵本のあとがきでは、さらに詳しく彼女がどんな差別も「法」で守ろうとしたことが紹介されています。

まほうのえんぴつで世界を変えた少女『マララのまほうのえんぴつ』

『マララのまほうのえんぴつ』 マララ・ユスフザイ(作)/キャラスクェット(絵)/木坂涼(訳)/ポプラ社

2014年にノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイ。

現在も人権運動家として活躍する彼女は、はじめから大きな目標があったわけではなく、当たり前に学校へ通い、テレビアニメをみるという日本の子どもと同じような生活をしていました。

マララは「まほうのえんぴつで描くと、描いたものはほんものになる」

というアニメに夢中で、まほうのえんぴつを持つことを夢見ていました。穏やかだったマララの日常は、少しずつ崩れていきます。

武器を持った男性たちが増えていき、町を支配するようになると、「おんなはそとではたらくな。おんなのこをがっこうへいかせるな」と言い始めます。 

どんどん自由を奪われていくマララ。

「このままじゃなにもかわらない。だれかがこえをあげなくちゃ。まって……、だれかじゃなくて、わたし?」

ひとつの可能性に気づいた彼女は、鉛筆を手に取り、脅された友だちが引っ越したこと、学校が壊されたことを、新聞やインターネットに投稿します。 

自分の鉛筆を「まほうのえんぴつ」に変え、未来を守ることができたマララ・ユスフザイ。権力や肩書がなくても、未来を変えた女の子の物語です。

イギリス・フランス・アメリカ・パキスタンに暮らした、4人の女性の物語。

暮らしの中で感じる違和感を情熱に変え、仕事に昇華し、女性たちの自由を広げてくれました。

どの女性も映画化されているので、絵本を読む前にまず映画をみて、どんな人生を歩んできたのかを知ってから子どもと絵本を読む方法もできますよ。

今回は4冊のみですがほかにも『ドラゴンのお医者さん ジョーン・プロクター は虫類を愛した女性』(岩崎書店)

『スワン―アンナ・パブロワのゆめ』(BL出版)『マリア・モンテッソーリ』(ほるぷ出版)など以前には見られなかった女性の伝記絵本は続々と刊行されています。

女の子が未来に希望を持てる絵本は新一年生への入学祝いにもぴったりですよ。

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<執筆者プロフィール>

絵ノ本桃子

区立図書館勤務後、育児をきっかけにシェア本屋「せんぱくBookbase」を開店。和室のある本屋として町で暮らす家族にとって読書の楽しみを提案している。本屋運営の傍ら、学校図書館勤務を経て、現在は不登校の子たちの学習をサポートしている。3児の母。

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