【絵ノ本桃子】6月20日は「世界難民の日」 親子で読みたい”難民”がテーマの本

一覧にもどる

2022.06.14

絵ノ本桃子

絵本

絵本 読み聞かせ

雨の日

梅雨

【絵ノ本桃子】6月20日は「世界難民の日」 親子で読みたい”難民”がテーマの本

絵本

【絵ノ本桃子】6月20日は「世界難民の日」 親子で読みたい”難民”がテーマの本

▼─────────────────▼
世界情勢が目まぐるしく変わり「難民」という言葉も子どもたちの耳に入ることが増えてきました。

「難民ってなに?」
「難民になることってあるの?」
「難民になったら、どうなるの?」

子どもから質問されたときに、親としてどう向き合い、どんな答えを出せるか。

学校では授業でなかなか教える機会を持てないので、子どもたちが自ら学べるように、授業では教わらない分野の本を置くのも、学校図書館の仕事のひとつです。

今回は6月20日の「世界難民の日」に向けて、学校図書館にも置いた本を中心に、家族で難民問題について話すきっかけとなる絵本と本を紹介します。
▲─────────────────

難民家族と暮らしていた猫の軌跡を描く『難民になったねこ クンクーシュ』

▲『難民になったねこ クンクーシュ』マイン・ヴェンチューラ(著)/ベディ・グオ(絵)/ ヤズミン・サイキア(監修)/ 中井 はるの(訳)/ かもがわ出版

イラクで家族とともに暮らしていた猫、クンクーシュ。
トルコへと逃げる船に家族の一員として乗り込んだときに、なんと家族とはぐれてしまいます。

漁村でほかの野良猫たちがごはんを食べているところに近づくと、あっという間に追い出されます。

その様子をみていた女性はクンクーシュを呼び寄せて、その立ち居振る舞いから「難民家族の猫ではないか」と予想して保護します。
その女性は、難民支援のボランティアをしている人でした。

ここから、家族に出会うまでの長い長い旅が始まります。
猫が家族の元へ帰ることができるように、何千人もの人の協力を得て、5000キロの旅をしたクンクーシュ。

巻末にはクンクーシュたちの「その後」にも触れられています。
災害や戦禍を逃れて避難する人たちの「動物も家族」という思いは、受け入れる側の事情で「邪魔だから手離しなさい」という扱いを受けることも多くあります。

「動物も家族」という思いが平和なときだけに許されるものではなく、どんなときも受け入れられるものになれるよう、私たちが考えるきっかけを与えてくれます。

日本で暮らす難民の家庭料理を伝える『海を渡った故郷の味 Flavours Without Borders new edition』

▲『海を渡った故郷の味 Flavours Without Borders new edition』/ 認定NPO法人 難民支援協会 (著)/ トゥーヴァージンズ

着の身着のまま、故郷を追われ、知らない土地へ逃れる難民の人々。
必要最低限の荷物の中にあるのは、わずかな食糧だけということも珍しくありません。

故郷に置いてきた伝統服、一緒に逃げられなかった家族、はぐれてしまった友人たち…。
たくさんの大切なものを失う中で、誰にも奪われずに残っているのが、「料理の記憶」です。

『海を渡った故郷の味』では、日本で暮らす難民の人々が故郷の味を再現したレシピを、各々のエピソードと共に紹介しています。 

家族代々伝わってきたレシピは国を失っても、失われることのない味。香り立つ料理は、故郷の空気をよみがえらせ、アイデンティティの拠り所のひとつになるのだと思います。

日本でよく使われる食材を使ったレシピもあり、日本人が身近に感じる料理も出てきます。 

「難民を知る本」としてではなく料理づくりに役立つ一冊として、さりげなく家庭のレシピ本コーナーに置いておけば、自然と難民問題について触れるきっかけになります。

この料理の背景にある思いを丁寧に取材した、

『故郷の味は海を越えて』安田菜津紀(著)/ポプラ社

という本もあるので、興味が湧いたら、こちらの本も読んでみてくださいね。

『海を渡った故郷の味』は日英表記、『故郷の味は海を越えて』はルビが振られていて、どちらも外国人に配慮した構成となっているのも特徴的です。
英語に触れるきっかけとしてもおすすめです。

ホームレス・ワールドカップを知っていますか?『路上のストライカー』

▲『路上のストライカー』マイケル・ウィリアムズ (著)/ さくま ゆみこ(訳)/ 岩波書店

ジンバブエの町で暮らすサッカーが大好きな少年デオは、村が襲われて大量虐殺があったことを知り、サッカーボールの縫い目にお金を詰め込み兄・イノセントを連れて逃げ出します。 

政府を頼ることができないまま、同じく逃げ延びた人とともに、溺れそうになりながらも危険な川を渡り、野生動物からいつ襲われるともわからない野生動物保護区を抜け、命からがら、南アフリカのトマト農園にたどり着きました。

食住が保障されたことに安堵した二人ですが、外国人を安く雇うことで解雇された地元の人から、憎しみ(ゼノフォビア)を向けられるのでした。 

行く先々で憎しみの攻撃を受け、生きる目的を失って自暴自棄になっていた彼に、サッカーのワールドカップに出場しないか、という誘いがきます。

ここでいうサッカーのワールドカップとは、日本では「ホームレス・サッカー」と呼ばれる大会のこと。

サッカーを通して人との関わりを再認識し、自信をもってもらうことで社会復帰を目指し、ホームレスの自立を目指すのが目的です。

デオは社会復帰の一環として、路上生活からサッカーの選手たちが住む寮に移り住みます。

チームメイトの中には、差別的な感情を露わする者もいますが、皆でそれぞれの背景を語り合うことで、大会出場に向けて手を取り合うようになる姿が描かれています。

対象は中学生以上なので、小学生には難しい話ではありますが、いつか子どもたちが興味を持ったとき、あるいは親が世界で起きていることを知る一つために読んでほしい一冊です。

少女の物語が、『生きのびるために』シリーズ

▲『生きのびるために』『さすらいの旅』『希望の学校』 デボラ・エリス(著)/もりうちすみこ(訳)/ さ・え・ら書房

1990年代のタリバン支配下のアフガニスタンで暮らす少女、パヴァーナ。

元教師の父親は捕らえられ、ジャーナリストの母親は息をひそめ、活動再開できる時をうかがっています。

男性同伴ではないと買い物もできない状況の中、パヴァーナは髪の毛を切り、亡き兄の服を纏い、"少年"として出稼ぎに行き、一家を支える大黒柱となりました。

閉鎖された学校、理不尽な暴力、父親不在による貧困……。一見絶望しかない世界ですが、ここに登場する女性はみんなたくましく、パヴァーナにいたっては家に閉じこもっているのが嫌だからと、男装して買い物に行けることに解放感すら感じているのです。

母親も、ただ家でおとなしくしているだけではありません。昔の同僚と内密に雑誌の創刊を企画し、姉はタリバンの支配下にない町に住む人との結婚が決まります。

"生きのびるために"彼らは決してあきらめず、道なき道を歩み、それぞれのやり方で未来を切り拓いていくのです。
この本につづく『さすらいの旅』『希望の学校』でも、ますます激しくなっていくタリバンとの戦いの中で、力強く生きる様が描かれています。

このお話はフィクションですが、作家のデボラ・エリス氏が難民キャンプで取材したときの話をもとに描いたといいます。
登場人物こそフィクションですが、描かれていることはほとんどが本当にあったことなのです。

報道だけでは一方的に虐げられていると思われていた彼らの物語を、一人ひとり丁寧に描いたシリーズ。
原作は高学年向けなので、低学年の子にはまだ難しい場合は、アニメ映画「ブレッドウィナー」をぜひご覧ください。

こちらは冒険要素を強めているので、本を手に取る前に、映画を観ると、より理解が深くなると思います。

「難民」というと報道で聞く程度の情報しかなく、報道の内容だけ聞くと、とても悲惨で過酷な状況ばかりを目にしがちです。

たしかに、彼らの暮らしは過酷です。
でも、『路上のストライカー』では、自由を奪われないようにと、懸命に走りぬく主人公たちの姿が、鮮やかに描かれています。

また、『生きのびるために』では、厳しい制限の中でも自由に生きる方法を見つけて、笑顔を失わない主人公の姿が見えてきます。

少年・少女が、大人も戸惑うほどの困難に立ち向かう姿は、胸に迫るものがあります。これは、児童書の王道ストーリーのひとつ。

「タリバン」「南アフリカ」というあまりにも現実に近いところを除けば、子どもたちのドキドキ・ハラハラする要素がふんだんに盛り込まれた冒険物語ともいえるので、児童にも手に取ってもらいやすい内容となっているのです。

いずれも物語の最後には「希望」が込められているので、いつか子どもが興味を持った時に手渡せる本として、候補に入れてみるのはいかがでしょうか。


絵ノ本桃子さんコラム一覧はこちらから

<執筆者プロフィール>

絵ノ本桃子

区立図書館勤務後、育児をきっかけにシェア本屋「せんぱくBookbase」を開店。和室のある本屋として町で暮らす家族にとって読書の楽しみを提案している。本屋運営の傍ら、学校図書館勤務を経て、現在は不登校の子たちの学習をサポートしている。3児の母。

せんぱくBookbase HP
https://bookbase1089.fun/

Instagram
@booksnanuk